審査総評

ニコン フォトコンテスト インターナショナル 2010-2011は、世界153に及ぶ国と地域、過去最高となる23,308名の応募者、60,000点以上の作品の応募がありました。今回は郵送によるプリント作品の応募をやめ、インターネット経由による画像データ作品のみの応募という長い歴史のなかでも初めてのケースとなったわけですが、そのためか応募数が前回に比べ、大幅な増加となりました。また、それら応募者の半数以上が三十代以下の若い世代からの応募でした。

審査に当たっては、これだけの数の作品を前にして、人はなぜ写真を撮るのかということを考えさせられました。写真を撮るということは、他者との関係性を結ぶ方法論としてはかなり有益だと思います。その関係性がそのまま写真に表れるのですが、その関係性がここに集められていたわけで、その多くの人々の気持ち、意識を集約していく作業が、このコンテストの審査なのではないかと思っておりました。作品としては、自然、動物、人々を捉えた写真、ドキュメンタリータッチの写真など、多岐にわたっておりました。ただ、応募作品に、消費社会、コンピュータにおけるフェイクな世界など、コンテンポラリーな部分が少なかったのが残念でした。また、審査を通じて、デジタル全盛を迎え、時代の過渡期にある今、ストレートフォトに価値を置くだけでいいのかという疑問も湧いてきました。ストレートフォトと加工された作品を単純に切り分ければ解決できることではないような気がします。審査をする側にも美学的な転換が必要な時が来ているのではないだろうかと思います。

多様な価値観をもつ審査員の皆様とコンセンサスを得るということの意味を考えながら審査を終えて、結果、非常に良い作品を選ぶことができました。グランプリにはストーリー性のある美しい時間を捉えた作品を選出いたしました。10人のキャラクターが一つの和をもって、結論に達することができたことを喜びと共に感謝いたします。

審査委員長 土田 ヒロミ

2010-2011 グランプリ作品

作品タイトル: Learning to fly
受賞者氏名: Debarshi Duttagupta
国名: インド

この作品について

暮れ泥む空に鳥人が飛ぶ、漁を終えて舟を岸に繫ごうとする漁師たち、手前の少年は、海面に遊ぶ魚を追っているのか?三つの物語がそれぞれに個別的に同時進行しているのですが、それらがお互いに引き合って、一つのゆったりとした時空間を作り上げています。夕闇がせまれば一日の営みが終息へ、自然と共に生きる原初的な人の営みが表現されています。あと一時(いっとき)もすると、明るい空も地上と同じ闇に変わることでしょう。永く繰り返されてきた小さな漁村のこの物語には、現代人が喪いつつある大切な時間が写し込められていて、哀愁すら感じられます。夕刻にノスタルジーな気分、世界共通なのでしょう。夕から夜へ、刻々と変化する美しい時間を捉えたのが成功の鍵といえます。(土田 ヒロミ)

ご利用にあたって

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