2月、ニコン本社の審査会場では、世界各地から寄せられた作品の審査が行われました。「ニコン フォトコンテスト インターナショナル 2010-2011」の募集部門は、A部門「自由題目」、B部門「Energy」の2部門。「自由題目」では、題材にとらわれず、心に感じたままに、自由に表現した作品、「Energy」では、強く心を動かされた情景や人物、あなたを動かす源となっているものや、エナジーを感じさせる作品を募集しました。

3日間にわたる審査会の前に、各審査員による予備審査を行い、60,000点以上の応募作品から候補作品は約3,500点にまで絞られました。約3,500点にも及ぶ作品の中から、コンテスト全体のグランプリ1作品を頂点とし、各部門において1位から3位までの32作品を選出、また、29才以下の応募者から寄せられた作品から「ヤングフォトグラファー賞」(4作品)およびその次点(16作品)を選出し、計53作品の入賞を決定します。

本審査では、まず部門ごとに作品がいくつかのグループに分けられ、各審査員が受賞候補作を選んでいくという方式がとられました。こうして選ばれた作品が、いったん会場のテーブルに並べられ、さらに各審査員による投票が行なわれて、候補が絞り込まれていきます。2日間をかけ、両部門を合わせて入賞候補となる約180点が選ばれました。いよいよ3日目。グランプリ、入賞作品の決定です。

部門毎に1位から次点までを決定し、それぞれ1位になった作品からグランプリを決定します。最初に「自由題目」から。2日間の審査で絞り込まれた作品をテーブル上に並べ、審査員による投票を繰り返すこと数回。40点ほどに絞り込まれた時点で、審査委員長の提案により作品を投票数順に並べての審査員による討議となりました。単に投票数で決定するのではなく、徹底的に話し合うことで審査員の総意を得て入賞作を決定するためです。絞り込まれた作品を前に、審査委員長が丁寧に1点1点取り上げ、それぞれの審査員が意見を述べていきます。各分野で活躍されている審査員の方々の熱い意見が飛び交います。中でもインターネットによる応募作品のみとなった今回は、加工処理された作品や明らかに作り込まれた作品をどう評価するかということについては、審査員の中でも意見が分かれ、作品を前に白熱した討議が繰り広げられました。また、応募データの大きさの指定など、今後のコンテストに対する課題も出てきました。こうした討議の末、ついに2作品に絞り込まれました。最終的な決定は挙手による投票となり、1位が決定。続いて2位、3位、次点を決定しました。次に課題テーマである「Energy」部門を同じ方式により審査。「Energy」の捉え方の多様さに、審査員によって評価の基準が分かれるなど、時間をかけての討議となりましたが、最終的には全員の総意をもって1位から次点までを決定しました。

いよいよグランプリの決定です。「自由題目」部門1位と「Energy」部門1位に選んだ作品、どちらをグランプリとするか。ここでも審査員一人ひとりが、どちらの作品がふさわしいかを意見を述べていきます。このコンテストの意義、何を評価するかについて、再度熱い討議が始まりました。そして、作品としての完成度が高いという評価から審査員総意のもとでグランプリが決定。すべての入賞作品が決定すると、最後は全員の拍手で審査終了となりました。

審査員の方々の総評

土田 ヒロミ(審査委員長)

世界規模の写真コンテストの審査委員長を務めることができて光栄です。大変名誉なことでありながら、6万点から一点に絞りこんでゆかねばならない作業は大変ドラマチックでもありましたが、大部分をおとさなければならずどこか残念なような、さびしいような気分にさせられました。いずれにせよ、大変な任務でした。選ぶことの難しさを実感しましたが、世界各国からの個性ある10人の審査員の皆様のコンセンサスを得ることができたことを感謝しています。デジタル写真の加工については、今後どのように評価していくかについては、まだまだ議論が必要だと思います。単純にストレートフォトと合成写真をカテゴリー別に分ければ良いということではなく、審査する側も学習し、新たな審査基準を持つべく用意すべきと感じました。

関口 照生

今回初めて審査員として参加させていただいたのですが、自分の専門外の、例えば動物の写真、昆虫の写真などに良いと思える写真が数多くありました。審査を進めていく中では、つい自分がこれまでやってきた分野から写真を見てしまい、動物などについてはこれらを専門とする他の審査員の方に選んでいただこうと思い、落としてしまったのではないかという悔いが多少あります。しかしながら最終的に選ばれた作品には、満足しております。

大石 芳野

たくさんの写真を前にして、さまざまな文化、暮らし、風土を教えられ、まさに百聞は一見にしかずというのはこのことかと実感するとともに、非常に感動を覚えました。それは人間だけでなく、動物、植物に至るまで感じたことです。まさに写真の力といえるものです。審査となるとこの中から選ばなくてはならないわけですが、結果的にはグランプリ、A部門(自由題目)、B部門(Energy)とも良い選択になったと思います。むろん、他の審査員とすべて一致ということはないのですので、残念ながら賞を逃した作品に心残りもありました。 それだけに、写真を応募された方々には次回もがんばって欲しいと思います。

南川 三治郎

フィルムベースで育ってきた者からすると多少違和感があったのは、デジタルになったということで、明らかにソフトを使って加工しているという作品が数多くあったことです。すでにデジタルという時代に変わり、写真を加工するという新しい分野が広がってきていることを痛切に感じました。個人的にはこうした作品が多くなれば、別の枠を作ることも必要ではないかと思いました。

鈴木 英雄

審査をするに当たって、コンテストの目的でもある、ひとつは写真文化、そして課題のテーマである「Energy」ということを考えました。入賞作については、テーマを満足させる写真という観点から選びました。
写真はもともと絵から始まったものであり、最も大事なのは絵心だと思っています。では、押せば写るという時代にあって、どうして押すのかといえば、それが感性というものであり、無意識の中の記憶が押しているのだと思います。記憶が記録となり、記録はまた記憶となっていく。つまり写真は技術をコントロールする感性が指令塔にならなくてはならないという持論があるのですが、そんな考えのもとに、子どもたちに写真文化を伝えていきたいと、このコンテストの審査を通じて改めて思いました。

大坂 寛

写真の良さというのは、作者が対象に対して何を感じたか、自分の気持ちを表せるところだと思います。これほど多くの写真の中から選ぶとなると、どうしてもインパクトの強い写真に目がいきがちですが、繊細な良い写真も多数ありました。過去の入賞作を見ると力強い写真が数多く見られるのですが、ひとつにはデジタルではなかったということもあるかもしれません。写真を撮る時の姿勢に違いがあるのではないかと感じました。フィルムということで大事に撮るということもあり、作者の感情が深く表れるというか、作者の内面がより出るのではないでしょうか。デジタルで撮るということで、作者の感情が希薄になっているのではないかと感じました。また、デジタルだから手を加えなくては、加工しなくてはいけないような感覚になっているような気がします。対象に素直に向き合って撮ることこそが大切であり、そうでないと写真文化がとてもつまらないものになってしまうと思います。



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